(一社)日本潜水協会の髙橋宏会長、藤井敦専務理事、髙木潤東北支部長とともに、潜水と土木の基礎的知識と技術を学ぶことのできる全国唯一の学校、岩手県立種市高等学校を訪問させていただきました。同校の伊藤俊也校長、平谷裕海洋開発科長、濱道秀人先生と潜水士育成に向けた課題等について意見交換をし、実習施設、学生寮、実習船を見学させていただきました。
●岩手県立種市高等学校の概要
今回、訪問した種市高等学校を紹介いたします。岩手県の最も北に位置する県立学校で、普通科・海洋開発科が設置されています。
特に、海洋開発科は、「南部もぐり」で知られる潜水士を育成するとともに、潜水と土木の基礎的知識と技術を学ぶことのできる全国唯一の学科であり、溶接など機械系の実習も行っています。また、各種の資格を取得し、海洋工事全般に関わる技術者として、国の内外で活躍しています。日本にいる潜水士の4人に1人が種市高等学校の出身といわれているそうです。
海洋開発科においては、日本国内の津々浦々から生徒を募集しており、受け入れのために、白鷗寮という寮を設置しています。
なお、令和6年4月現在で生徒数は、88名でそのうち、海洋開発科の生徒は、35名となっています。
●意見交換
伊藤校長、平谷海洋開発科長、濱道先生から、種市高校の概要や海洋開発科について、南部もぐりの歴史について、そして、現在、潜水士を育成するにあたっての課題、その進路等についてお話をいただきました。
今の問題として、少子化の問題もあり、志望者が減少してきているとのことです。このため、先生方が、全国各地の中学校に足を運んで、入学のお願いし、生徒の確保、潜水士の育成に力を注いでいるとのことでした。
●潜水実習施設の視察及び潜水実習
次に、潜水実習プールがある実習棟の施設・設備や潜水器具を説明していただき、生徒の皆様の潜水実習を見せていただきました。
潜水実習プールは、水深1.2m、3m、5m、10mの階段式プールとなっており、実習内容に応じての活動が可能となっています。
実習棟の施設見学、生徒の皆さんの潜水実習を見せていただいた後に、予定はありませんでしたが、ぜひ、潜水の体験をということで、「南部もぐり(ヘルメット式潜水)」の体験をさせていただきました。ドライスーツは、水が中に入らないので、洋服を着たまま先生方に着せてもらいました。ヘルメット内の空気弁を頭で押して、浮力を調節することを教わり、全身、約65㎏のドライスーツを着込んで、最後にヘルメットをかぶり、いざ、潜水プールに、潜水開始。意外とスムーズに潜ることができましたが、実際に海中での作業となると大変なのだろうと感じました。このような訓練を積んで現場で頑張っておられる潜水士の方々の貢献が、港湾工事に如何に重要不可欠なのか、その一端を体験することができました。改めて、現場で作業している方々に敬意を表したいと思います。
●実習船「種市丸」
実習棟視察後、海洋での潜水実習を行う潜水作業実習船を見学しました。種市丸は、第7代種市丸として、平成31年3月に竣工しました。船舶の概要は、全長23.8m、総トン数43トン、最大速力11ノット、最大搭載人員50名(船員4名、教官6名、生徒40名)です。装備としては、船尾上甲板において潜水用空気の把握できるよう潜水用空気制御装置及び警報装置、そして、潜水実習に適した場所を探索するため海底探査装置、潮流観測装置及び水中テレビカメラロボットが装備されており、生徒の皆さんへの潜水教育の充実と実習時の安全確保が図られています。
●終わりに
先生方が潜水士を目指す高校生を養成するために熱い指導に触れさせていただきました。また、生徒の皆さんからは、チームワークの良さと潜水士になるための真剣さを感じました。今後とも港湾工事等における水中部の工事については、潜水士の活躍が必要不可欠であります。潜水士を志す人が増やすためには、港湾工事における予算を確保し、潜水工事の機会を増やし、そして、潜水士の処遇改善や賃金引上げ等といった働き方改革が必要と強く感じます。この実現には、国政の後押しが必要であり、自分もその一翼を担う気持ちを強くしました。
●番外編(レスリングの種市高等学校)
種市高校のレスリング部は、全国屈指の強豪校で、毎年、高校全国高等学校総合体育大会(インターハイ)等の全国大会に出場しています。
4月27~28日には、横浜武道館(神奈川県)で開催された「JOCジュニアオリンピックカップ大会 2024年度全日本ジュニアレスリング選手権大会」に3人の生徒さんが出場されました。それぞれの階級に分かれて、奮闘されました。
また、今年の7月から8月にかけて北部九州で開催された高校全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では、2人の生徒さんが出場されました。